金融パーソンなら知っておきたい!データサイエンス/AIの基本用語

データサイエンス基礎

とある金融機関でAI戦略やデータ活用の推進を担当しているポンと申します。近年のAI技術の進歩は目覚ましく、毎日大量のAI関連のニュースがあり、徐々にキャッチアップしきれなくなってきております。

みなさまの周りでも、「AX推進」「AIエージェント」といった言葉が当たり前に飛び交うようになったのではないでしょうか。しかし、会議や資料で出てくる言葉の意味を、今さら「それ何ですか?」とは聞きづらい…と感じている方も少なくないはずです。

そこで今回は、データサイエンスの専門家ではない金融パーソンのみなさまに向けて、これだけは知っておきたい用語を厳選しました。「金融の現場でどう使われるか」という視点を交えながら、できるだけ分かりやすく解説します。

この記事を読み終えれば、データサイエンティストやエンジニアとの会話がスムーズになり、またAI関連のニュースや資料の理解度が格段に上がるはずです。


第1章:まずはここから!基本の3つの言葉

AI、機械学習、ディープラーニング。まずはこの3つの関係を押さえましょう。AIという大きな枠の中に機械学習があり、その中にさらにディープラーニングがあるイメージです。

1. AI(人工知能 / Artificial Intelligence)

  • 簡単な説明: 人間のように物事を考えたり、学んだりする賢いコンピュータを作るための技術や研究のことです。
  • 一言でいうと: 人間のように考えるコンピュータの総称。
  • 金融での使われ方: 「我が社はAIを活用して業務を効率化する」といった場合、この広い意味でのAIを指していることがほとんどです。

2. 機械学習 (Machine Learning / ML)

  • 簡単な説明: コンピュータに大量のデータ(お手本)を見せて、その中にある法則やパターンを自力で見つけ出させる技術のことです。
  • 一言でいうと: AIを実現するための、ひとつの「手法」。
  • 金融での使われ方: 金融業界ですでに実施している「AI活用」という場合、多くはこの機械学習を指します。不正利用検知審査モデルなどは、まさにこの技術が使用されていることが大半です。

3. ディープラーニング (Deep Learning)

  • 簡単な説明: 人間の脳の仕組みをヒントにした、とても複雑でパワフルな機械学習の手法です。特に、画像や音声、文章の理解が得意です。
  • 一言でいうと: 機械学習の中でも、さらに発展的な手法。
  • 金融での使われ方: 手書き文字のOCR(書類のデジタル化)、顧客からの問い合わせに自動で回答するチャットボット、市場ニュースの解析などに活用されています。

第2章:AIは「何が」できる?機械学習の代表的なタスク

機械学習が具体的に何をしてくれるのか、その代表的な「タスク(仕事)」を3つ紹介します。分類と回帰は教師あり学習(正解ラベルがある学習)に大別され、クラスタリングは教師なし学習(正解ラベルがない学習)に大別されます。

1. 分類 (Classification)

  • 簡単な説明: 手元にあるデータが、どのグループに当てはまるかを自動で仕分ける作業のことです。
  • 一言でいうと: データを、決まったグループに「仕分ける」こと。
  • 金融での使われ方:
    • 与信審査: 顧客情報から、融資案件を「貸し倒れリスク高/低」に分類する。
    • 不正検知: 取引データから、その取引が「正常/不正の疑い」のどちらかに分類する。

2. 回帰 (Regression)

  • 簡単な説明: 過去のデータとの関係性から、将来の「数値」がどうなるかを予測する作業のことです。
  • 一言でいうと: データから、将来の数値を「予測」すること。
  • 金融での使われ方:
    • 株価・為替予測: 過去の市場データから、明日の株価や1週間後の為替レートといった「連続した数値」を予測する。
    • 不動産査定: 物件の広さや立地などから、その「成約価格」を予測する。

3. クラスタリング (Clustering)

  • 簡単な説明: 正解がわからないデータの中から、似た者同士を集めて、いくつかのグループに自動で分ける作業のことです。
  • 一言でいうと: 似たもの同士を「グループ分け」すること。
  • 金融での使われ方:
    • 顧客セグメンテーション: 取引履歴から類似した顧客グループ(例:「富裕層グループ」「節約家グループ」)を自動で発見し、マーケティング戦略に活かす。

第3章:生成AI時代の頻出キーワード

ここからは最新トレンドです。ChatGPTの登場以降、ビジネスのあり方を大きく変えつつある「生成AI」に関連する重要な言葉を解説します。

1. LLM (大規模言語モデル / Large Language Model)

  • 簡単な説明: インターネット上の膨大な文章を読んで、人間のように言葉を操ることを覚えたAIのことです。
  • 一言でいうと: 文章の読み書きが非常に得意な「超優秀な新人」。
  • 金融での使われ方:
    • レポート・議事録の要約: 長大な市場レポートや会議の議事録から、要点を瞬時に抽出する。
    • 文章作成の支援: 顧客へのメール文面や、商品提案書のドラフトを作成する。

2. RAG (検索拡張生成 / Retrieval-Augmented Generation)

  • 簡単な説明: AIが質問に答える前に、社内マニュアルなどの特定の資料を検索して、その情報に基づいて回答を作る仕組みのこと。これにより、AIがより正確で新しい情報を使えるようになります。
  • 一言でいうと: AIに「社内資料をカンニング」させる技術。
  • 金融での使われ方: コンプライアンスが重要な金融業界では、極めて重要な技術です。最新の社内規定や商品情報に基づいた、正確な営業トークや顧客回答を生成させることができます。

3. AIエージェント (AI Agent)

  • 簡単な説明: 人間からの指示を受けて、自分で計画を立て、PCの操作なども含めて自動でタスクを実行してくれるAIのことです。
  • 一言でいうと: 指示を理解し、自らタスクをこなす「デジタル社員」。
  • 金融での使われ方: 「A社の最新の財務状況と関連ニュースを収集し、サマリーを作成して」といった定型的な情報収集・分析業務の完全自動化が期待されています。

【コラム】学習を加速させるヒント:わからないことはAIに聞こう!

この記事で多くの用語を紹介しましたが、一度にすべてを完璧に理解するのは難しいかもしれません。そんな時こそ、今まさに解説した「生成AI(LLM)」を、あなたの専属家庭教師として活用してみましょう。

  • いつでも、気兼ねなく質問できる
  • あなたのレベルに合わせてくれる(例:「小学生にもわかるように説明して」)
  • 対話しながら深掘りできる

効果的な質問のコツ

  1. 役割を与える: 「あなたは金融業界に詳しいデータサイエンティストです。」
  2. 文脈を伝える: 「私は金融機関の営業担当で、データサイエンスは初学者です。」
  3. 具体的に聞く: 「RAGは、金融機関の顧客対応において、具体的にどのように役立ちますか?」

ぜひ、生成AIを「賢い検索エンジン」や「思考の壁打ち相手」として使いこなし、日々の学習や業務に役立ててください。


おわりに

今回は、データサイエンスの基本用語から最新トレンドまでを解説しました。

大切なのは、これらの言葉を暗記することではありません。「この技術は、自分の業務のどこで、どのように使えるだろうか?」という視点を持つことです。そして、わからないことがあれば、臆せずAIや有識者に問いかけてみることです。

この記事が、皆さんとデータサイエンスの距離を少しでも縮めるきっかけになれば幸いです。

もし、より詳しく学習したい方は以下書籍がおすすめです。資格書ですがよくまとまっています。

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