はじめに:分析設計でつまずかないために
「とにかくデータを見てと言われたけど、どこから始めるべき?」「金融のデータって特殊すぎて難しそう…」
そんなあなたの悩み、よく分かります。
この記事では、金融業界で初めてデータ分析に取り組む方向けに、プロジェクト立ち上げの最重要フェーズである分析設計をステップバイステップで解説します。
フレームワーク「BADIR」の考え方も取り入れつつ、実務でそのまま使えるテンプレート&事例つきで紹介します!
分析設計とは? ─ ビジネス課題を「数字で答えられる問い」に翻訳する作業
Step 1:いつ・誰がやるの?
- 実施タイミング:プロジェクトキックオフ直後がベスト
- 関与メンバー:ビジネス部門・データ部門・IT部門・場合によっては外部ベンダーも
💡ここでのゴールは、「何のために分析するのか」を
全員で共通認識にすること
なぜ分析設計が重要なのか?
Step 2:要件ブレと手戻りを防ぐ
- 金融データは個人情報の制約が厳しく、定義の複雑さも段違いです。
- 分析設計が曖昧だと、完成後に「そもそも目的が違った」となり、手戻りコストが膨大に。
具体的な失敗例
- 「優良顧客=月10万円以上の決済」と定義 → 実際はキャンセルや一時停止も含まれていた
- モデル完成後に「重視すべきは解約抑止だった」と判明 → 再設計・再学習が発生
目的変数の定義 ─ 成否を分ける“分析の核”
Step 3:目的変数のつくり方テンプレート
ステップ | やること | チェックポイント |
---|---|---|
Step 1 | 自然文で定義を書く | 例:「過去12ヶ月で残高平均50万円以上&延滞なし」 |
Step 2 | 関係部門レビュー | 商品部・リスク部と認識が一致しているか? |
Step 3 | SQLで件数試算 | 対象顧客が想定より多すぎ/少なすぎないか |
Step 4 | 変更履歴を残す | NotionやConfluenceでドキュメント管理 |
📌目的変数は「誰が・どんな状態のとき・何をしたか?」で定義すると漏れが少なくなります。
BADIRフレームワークを使った逆算設計
Step 4:分析の“使われ方”から設計を逆引きしよう
分析が現場で使われない一番の理由、それは「活用の場面が曖昧」なまま作ってしまうことです。

フレームワーク紹介:BADIRとは?
項目 | 意味 | 目的 |
---|---|---|
B:Business Question | ビジネスの問いを明文化 | 何を明らかにしたいか? |
A:Analysis Plan | 仮説・データ・手法の設計 | どうやって検証するか? |
D:Data Collection | データ収集とクレンジング | 適切な範囲で、正しく |
I:Insights | 洞察の抽出 | 何が分かったのか? |
R:Recommendations | 提言・実装設計 | どう活かすか? |
💡この順番を踏むことで、「作って終わり」を防ぎ、分析を
実行に繋げる
活用シーン別:設計の具体例(金融データ編)
ケース①:新規カード申込のターゲティング
- 目的変数:過去3ヶ月以内に申込+審査通過
- 分析軸:年齢層・年収・職業カテゴリ別の傾向
- 施策:属性に応じたDMやWeb広告のセグメント設計
ケース②:不正利用検知モデル
- 目的変数:取引後30日以内に不正と報告されたか
- 分析軸:決済時間帯・金額・デバイス情報
- 施策:閾値超過でリアルタイムアラートを送信

5ステップで整理する分析設計テンプレート
ステップ | やること | 補足 |
---|---|---|
Step 1 | ビジネスゴールの整理 | 例:半年でリボ利用額を10%増やす |
Step 2 | 目的変数と評価指標の決定 | 例:利用金額、延滞フラグなど |
Step 3 | データ棚卸しと整備計画 | 審査情報・属性のマージとクレンジング |
Step 4 | モデリング方針の決定 | AutoML/解釈性重視か精度重視か |
Step 5 | 体制・レビュー・ガバナンス | セキュリティ・法務と事前に合意形成を |
まとめ:分析設計のカギは「翻訳力」+「逆算思考」
- 分析設計とは、ビジネスの課題を数字で答えられる問いに翻訳する作業
- 金融業界では特に、「目的変数」と「活用場面」の定義が成功の分かれ道
- BADIRフレームワークをベースに、ステップバイステップで設計→実行まで一貫化しよう
次の一歩:あなたのプロジェクトでやってみよう!
- 今の業務で「分析したいこと」を自然文で書き出してみましょう
- そのうえで「何を目的変数とするか」「どんなデータが必要か」を簡単に整理するだけでも大きな前進です
🎯やってみよう!まずは白紙に「問い」から書き出してみてください。
より体系的に学びたい方はこちらの本をぜひ読んでみてください
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Hiro|データサイエンティスト
ベンダーと金融現場の“両サイド視点”でデータ活用を支援中。
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