はじめに:頑張って作ったのに使われないモデル
「モデル精度は高いはずなのに、なぜか現場でうまく使えない……」
そんな違和感を抱いたことはありませんか?
実はその多くは、データ設計や検証方法の設計ミスに起因します。
本記事では、モデルレビューの第一歩としてチェックすべき「データ準備と検証設計」の観点を、良い例/悪い例とともにステップバイステップで解説します。
PoCの段階から“失敗しない設計”を一緒に身につけていきましょう!
1. データ準備(EDA)のやり方とは?
EDAの目的は「地雷を踏まないこと」
EDA(Exploratory Data Analysis)は、モデル構築前に“どんなデータなのか”を理解するための調査工程です。
ここでの見落としは、後々の精度劣化や運用トラブルに直結します。

【良い例】事前にリスクを察知して手を打つ
- 欠損率を変数ごとに集計し、削除 or 補完の判断材料に
- ターゲット分布を見て、クラス不均衡(例:1:99)を早期に発見
- カテゴリ変数のユニーク値を確認し、高カーディナリティ(例:店舗ID)の扱いを検討
→ これにより、後工程での精度と解釈性を両立できた!
【悪い例】精度99%はウソだった?
- ターゲットの99%が「0」だったことに気づかず学習
- 結果、すべて「0」と予測してもAccuracyは99%
- でも実際には、重要な1%(=陽性)を取りこぼしていた
→ 分類評価には F1スコアやMCC を使いましょう!

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2. 検証分割の設計で注意すべきこと
モデルレビューのカギは「未来を見ない」こと
検証設計を誤ると、汎化性能(=未知データへの強さ)が正しく測れません。
そのままリリースしてしまうと、「現場で全然当たらない……」という事態に。
【良い例】時系列データはOut-of-Timeで分割
- 学習データ:1年前〜3ヶ月前
- 検証データ:直近3ヶ月
- 将来予測の構造を本番に近づけるよう設計
→ 「未来データを見ながら予測する」ようなリーケージ(情報漏れ)を防げる!
【悪い例】IDをまたぐランダム分割で大事故
- 顧客IDを含むデータをランダムに分割
- 同一顧客が学習/検証両方に混在
- モデルが「この人の傾向」として記憶 → 本番で未見ユーザーに対応不可
→ GroupKFoldやLeaveOneGroupOutの活用を!
3. モデルレビューでよくある落とし穴と対策
課題カテゴリ | よくあるミス | レビューで確認すべきポイント |
---|---|---|
欠損処理 | 「少ないから無視」で突き進む | 欠損箇所でセグメントが偏っていないか確認 |
クラス不均衡 | Accuracyだけで満足 | F1/MCCで再評価、SMOTEや重み付けで対応 |
時系列検証 | ランダムに分けてしまう | Out-of-Time分割で未来データを排除 |
IDリーケージ | 同じ人が両方に登場 | Group単位での分割を忘れずに! |
4. まとめとチェックリスト
モデルレビューは「作った後」ではなく「設計段階」で!
- EDAで “地雷”を見つけて除去
- 検証設計で “未来を見ない分割”を徹底
- リーケージや不均衡などの問題は、レビュー段階で炙り出す
✅ データ設計 × 検証設計 チェックリスト
- 欠損値のパターンと影響を確認した
- ターゲットのクラス比率を確認し、必要に応じて補正した
- 高カーディナリティなカテゴリ変数の扱いを検討した
- 外れ値・分布の偏りを可視化した
- 検証データの分割方法に時系列/グループ構造を反映した
- 分割・評価手法をドキュメントとして残した
具体的にどんな時にどんな対処をすれば良いかは、実際経験をしたかがとても重要な要素になります。
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次回予告:モデル別レビュー観点
次回は「モデルの種類ごとに見るべきポイント」を徹底解説!
- 分類・回帰・時系列モデルの精度の落とし穴
- 説明可能性 vs 精度 のトレードオフ
- 「良いモデル/悪いモデル」の見分け方
Hiro|データサイエンティスト
ベンダーと金融現場の“両サイド視点”でデータ活用を支援中。
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