【タイプ別】モデルレビューの進め方 分類・回帰・時系列で異なる“見るべきポイント”とは?

AI・機械学習

はじめに:”とりあえず精度”になっていませんか

モデルレビュー、どう進めていますか?

「とりあえず精度を見て終わり」になっているとしたら要注意です。

分類・回帰・時系列モデルでは、それぞれ前提も評価指標も異なります。

この記事では、モデルタイプ別にレビューすべき観点を良い例/悪い例とともにステップ形式で整理

現場で「使えるモデル」に仕上げるための視点を、あなたのレビュー設計に役立ててください!


目次

  1. 分類モデルのレビュー観点と落とし穴
  2. 回帰モデルのレビュー観点と落とし穴
  3. 時系列モデルのレビュー観点と落とし穴
  4. まとめとチェックリスト

1. 分類モデルのレビュー観点と落とし穴

業務要件と評価指標の整合を取る

分類モデルでは、「Precision(適合率)」「Recall(再現率)」「閾値」がポイントです。

単純なAccuracy(正解率)では測れない、業務目的に合った精度の設計が必要になります。


【良い例】PrecisionとRecallのバランス設計ができている

  • クレジットカードの不正検知で、Recall(取りこぼしを防ぐ指標)を重視
  • ROC曲線(予測の精度を可視化するグラフ)やPrecision-Recall曲線を使って閾値調整
  • 「誤検知が多少あっても、漏れを防ぐ」業務要件とマッチした閾値設計が実現できた

【悪い例】Accuracyだけで“高精度”と判断

  • 異常率2%のデータに対し、常に「正常」と予測 → Accuracyは98%
  • でも本当に当てたい異常(ポジティブ)を全く予測できていない
  • 本来は、F1スコア(適合率×再現率のバランス指標)やMCC(相関係数ベースの指標)を見ておくべきだった

2. 回帰モデルのレビュー観点と落とし穴

誤差の“性質”に合った評価指標を選ぶ

回帰モデルでは、RMSE(平均二乗誤差の平方根)/MAE(平均絶対誤差)/R²(決定係数)などを適切に使い分けましょう。

また、外れ値や“0が多いデータ”(ゼロインフレーション)への対応も重要です。


【良い例】RMSEとMAEの使い分けができている

  • 高価格帯商品の売上予測で、RMSE(大きな誤差をより重く評価する指標)を重視
  • 同時にMAE(誤差の平均)やR²(どの程度説明できているか)もチェック
  • 外れ値にはWinsorization(極端な値を一定範囲に丸める処理)を適用

【悪い例】ゼロが多いデータをMAEだけで評価

  • 保険金支払額予測で、支払ゼロが90%以上
  • MAE最小化=全て「0円」と予測するモデルでも高スコア
  • 実際にはリフトチャート(予測の優劣を示すグラフ)や残差分布(誤差の偏り)で精度の低さが明白だった

ゼロインフレーションモデル(0が多い前提の統計モデル)や、混合分布(Gamma+Poisson)の活用を検討すべきだった


3. 時系列モデルのレビュー観点と落とし穴

「未来を見ない」構造と季節性の分離

時系列モデルでは、時間構造(過去→未来の流れ)を守ることが命。

検証方法・周期性・スパイク(急増)要因を分けて考えましょう。


【良い例】スパイク要因とトレンドを分離して分析

  • 「月末セール」「GW明け」などスパイクを新しい特徴量(ダミー変数)として導入
  • モデルがどう予測に使っているかをPDP(部分依存プロット:変数と予測の関係を可視化)で確認
  • 同時に週次/月次の周期性(シーズナリティ)も整理

【悪い例】ランダム分割で未来データを学習に含めた

  • 「2023年1月〜12月」のデータをランダム分割
  • 学習データに11月、検証対象に10月 → 未来を見て学習した状態
  • 本番運用では精度が激減

Out-of-Time分割(未来データを除いた検証設計)が基本原則です!


4. まとめとチェックリスト

モデルタイプ別に“評価の軸”を変えよう!

モデルタイプ評価指標/観点要注意ポイント
分類F1スコア・AUC・閾値調整Accuracy過信による誤判断
回帰RMSE・MAE・R²・外れ値処理ゼロばかりのデータに未対応
時系列OTV分割・スパイク特徴量・周期性ランダム分割で未来が漏れる

✅ モデルレビュー チェックリスト(初学者向け)

  • モデルの種類に合った評価指標(F1やRMSEなど)を使えているか?
  • データに偏り(クラス不均衡・ゼロ・外れ値)があるか確認したか?
  • 時系列データは未来を見ないように分割できているか?
  • 評価結果を見て、どう改善すべきかが言語化できているか?

モデリング結果を正しく評価する手法が一気に学べておすすめです。

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次回予告:再現性・MLOps観点のレビューへ

次回は、チームで使えるモデルレビューをテーマに、

  • ドキュメント管理
  • モデルのバージョン管理
  • CI/CD(自動テスト・自動再学習)

など、実運用に耐えるMLOps視点のレビュー設計を深掘りしていきます。


Hiro|データサイエンティスト

ベンダーと金融現場の“両サイド視点”でデータ活用を支援中。

X(旧Twitter)と LinkedIn でも最新ネタを発信中 → @Hiro_data_fin

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